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「だって、イチャパラに書いてたよ」
「なんて」
すっかり日が暮れてしまった帰り道をカカシを背中に乗せて歩く。
「『死んじゃうー死んじゃうー』って順子が言ってた」
「ぶっは、アホか。バカカシ。あれは、善すぎて…、いや、なんでもねぇわ」
「なに?」
「やっぱ、お前にはまだ早えぇよ。アレ、読むの禁止な」
肩に回していた腕を離して、カカシが伸びあがる。
「えー。ライバルの動向を調査しないと」
「なんだよ、ライバルって。つか、元気になったんなら歩け」
「やだ」
後ろを振り返りると、よじ登るようにして背中で身じろいだカカシに、素直に甘えられているようで顔がにやける。
「なにニヤニヤしてんの。気持ち悪い」
「ん?可愛いなぁと、思って」
そんな一言で背中の体温が上昇したのが分かって、さらにニヤリとする。
「…嘘。今日かわいくねぇって言ったじゃん」
「まだ根に持ってんのか」
「オビトに言われた事は忘れないもん」
「カカシは可愛くねぇところも、全部可愛い」
「なにそれ、全然わかんない。誤魔化そうとしてるでしょ」
「や、本当。本当」
「胡散臭い」
不貞腐れたような声を出すカカシ。立ち止まり背中に向かって名前を呼んだ。
乗り上げ顔を見せたカカシの露出している目のふちに派手なリップ音を立ててキスをする。
頬を押さえて、赤くなる可愛いカカシを背負い直して歩き出す。
「さて、今日は俺が晩飯作るかな」
「…っえ。いいよ」
「遠慮すんな。たまにはお前もゆっくりしろ」
「オビトのご飯、まずいんだもん」
「なんだと?…歩くか?」
降りる気のないカカシが回した腕にぎゅっと力を込める。
「カカシ、寒くないか?」
「大丈夫」
「ベスト買ってやるっつたのに、店閉まっちまったな」
「あっ!」
「どうした?」
「…ぱんつ、忘れて来た」
「マジかよ」
  翌日、任務前に桜の木の下まで来て探してみたが、カカシの紐ぱんを見つける事は出来なかった。
それどころか、綱手様から預かった見合い写真が家のどこを探しても無い。
素直に謝ろうと向かった火影邸で、昨日俺が寝ている間にカカシが写真を突き返しに来た事を知らされる。
綱手様と一悶着したカカシは、風呂で俺が付けたキスマークを見せて今後一切見合いの話を持ってくるなと言ったらしく、その事についても問いただされて憤死ものだった。
そうだった、アイツは目的の為には手段を選ばない所がある。カカシがしたたかなヤツだった事を思い出し、苦笑する。

「本当、カカシには敵わねぇな」