13
「オビト…?」
押し殺したような声に、オビトの瞳を覗き込むと、赤い瞳が滲んでいる様だった。
「泣いてる…の?」
「泣いてねぇよ。バカカシ」
先程のセリフが引き金なのだろうか。いや、いくら泣き虫でもあんな事で泣く訳がない。
よっと声を掛けて体制を整えたオビトが、律動を再開し始める。
同時に濡れた音を上げて、速度を上げる掌の愛撫に思考が散りじりになっていく。
「あっ…、オビト…俺のは、良い、からっ」
「良いから、…気持ちよくなっとけ」
「でもっ…」
「本当、もう黙れって」
困ったような表情のオビトに唇を奪われる。喋る隙も無い位に、口内を埋めつくされる。決して乱暴ではない、甘ったるいキスに身も心も溺れる。
きゅぅっと胸が締め付けられるような切なさを覚え、左胸を抑えると、いつの間にか左胸の痛みが消えていた事に気付いた。
「カカシ…、お前の世界の俺もお前の事大事だったと思うぜ。なんたって、うちはが眼を譲るっつーんだら間違いねぇーよ」
「オビ…ト?」
「だから安心しな」
急にどうしたのかと疑問を投げかける前に再び唇を塞がれ、俺の言葉は飲み込まれてしまう。
唇の感覚が無くなる程に舐め吸われ続け、身体中をオビトの温かな手にさらわれた。
バラバラになって溶けてしまいそうな身体の真ん中で、打ち付けられるオビトの熱だけが確かなもののような気がする。俺にとっての唯一の存在。
濡れそぼった唇が離れた時、舌舐めずりしたオビトの瞳に見つめられ、気持ちだけで達してしまったかのように爪先から這い上がってきた快感が下腹の奥でビリビリと帯電する。
「ひっ、ぁ…はっ…」
どうしようもできなくて、オビトに腕を伸ばして助けを求めた。
頭ごと抱えるように強く抱きしめてくれる腕に縋り付く。
全力疾走した後かのようにどっどっどっと自分の心臓の音が聞こえる。耳の奥に同じく鼓動を速めたオビトの息遣いが反響して、頭の中までぐらぐらと揺さぶられた。
「…カカシ、好きだ」
自分の都合の良い幻聴が聞こえたのかと思った。耳朶に触れたオビトの唇が動き現実である事を教えてくれる。
「ふっ…」
「好きだ」
オビトの声に視界が白く染まる。押し付けられた腰が不規則に揺れ、腿の間で液体が弾ける音が聞こる。
とろりと熱い滴が垂れる感触に、ビクビクと脈打っているものを脚を擦り合わせ愛でる。
ぼんやりと霞む視界に自分の腕が映り、白濁で出来たスジに自分も達した事を知った。