12
口の中に広がる苦味にカカシの限界が近い事を知る。裏側に舌を這わせながら音が漏れる程に吸い上げ唇で扱いてやると、一際高い喘ぎを漏らして四肢を引き攣らせた。
「ッん…ぁあ!」
勢い良く唇から抜け出たカカシの性器から熱い精液が迸る。

カカシの精液を真正面からまともに浴びた分身がぼふんという音と共に消える。それと同時に分身の記憶が流れてきた。
フラッシュバックのように淫らなカカシの姿が見え、その中に不安げに揺れる瞳を見つける。
カカシがリンの話をした時に見せた青白い顔と重なる。
その時、人の気配に気づいた。肩で息をするカカシを抱き上げて身を低くする。桜の木に隠れて道の向こうを伺うと、先ほどのくノ一達だった。
「遅くなっちゃったねー」
「アンタがうちは隊長追いかけようなんて言うからでしょ」
「もーどこ行っちゃったんだろあの二人」
「汗冷えちゃっった。風邪ひいたらどうすんの」
「まぁまぁ、美味しい団子屋みつけたんだから良しってことで!」
「今度おごりなさいよ」
息を潜めて通り過ぎるのを待っていると、腕の中で身じろいだカカシがベルトに手を掛けてきた。地面に降ろし、その手を止めると半分以上身体をしなだれ掛けたままのカカシが顔だけ上げて睨んでくる。
「してくれるって言っ…ん」
話し始めたカカシの口を慌てて塞ぎ、目だけでやめろと訴える。
「ねぇ、今なんか聞こえなかった?」
「そう?わかんなかった」
「うちは隊長かしら」
「えー。おばけじゃないの?」
カカシの手は止まることなく、カチャカチャとベルトをはずしていく。火傷をしている手を乱暴に扱うことも出来ずに下履きを寛げられてしまう。
「…ッ」
スルリと潜り込んできた指が絡みついてくる。
「ほら、また!」
「やだ、やめてよ。ここの桜、出るって有名じゃない」
「そうなの?鳥肌立ってきた」
「…大戦中に焼けちゃった色白の女のおばけが手招きするって噂よ」
すると、カカシは何を思ったのか急に火傷をしている方の腕を伸ばして地面にうつ伏せになった。
肘から先を上げて、道の方に向かってひらひらと振って見せる。
「ギャー―――くぁwせdrftgyふじこーー!」
「でーーーーたーーーー!!」
叫び声に桜の木から顔を出して覗くと、我先にと押し合いながらくノ一達が走り去って行った。
唖然とする俺に向かって身体を起こしたカカシが火傷が役にたったと笑う。
「はぁー…こんなとこ見られたらどうすんだ、バカカシ」
腕の中に引き戻して、大きなため息をつく。
「ふふっ…警備隊長干されたら、俺が養ってあげる」
「じじぃになるまでか?」
少し思案したカカシが、身をよじって頬に口づけてくる。
「大丈夫だよ。たぶんコッチの俺もオビトの事好きだから」
覚えの良さはこんなところでも発揮されるらしく、脚の間から伸ばした指先で俺の股間に触れたカカシはもの欲しそうな瞳で見つめてくる。
年下の癖に生意気で、女にモテて、俺の欲しいものをカカシは全て持っていた。それを当たり前のように憮然とした態度にムカついていた。
でも、それはカカシが本当に臨んて手に入れたものでは無かったのかもしれない。それどころか、何かを欲しがっている姿なんて思い出せなかった。
いつも何かに耐えているようなカカシの横顔。
そのカカシが自分を求めているという事が、どうしようもなく俺を煽る。
誘われるままに口づけ、腰を進める。柔らかな肉に包まれる感触に思わず呻き声が漏れた。
誤魔化すようにカカシの性器に手を伸ばし、同じリズムで扱く。
「身体痛くないか?」
極力体重をかけないようにして、カカシの肌が直接地面に触れないように気を配った。
「ふっ…ダメ、オビト。そんなにしたら、すぐイッちゃう。ゆっくり、…ゆっくり…して」
強めに握った手を焦れったい程に時間を掛けて引き上げる。
掠れた吐息を吐く唇を何度も食んでいると、ふふっと息だけでカカシが笑った。
「なに笑ってんだよ」
動きを止めた俺を、また脚の間に手を伸ばしたカカシの手が、存在を確かめるように触れてくる。
「俺ね、これ好き。オビトのがドクンドクンってしてるのが伝わってきて、俺の中にいるみたい」
幸せそうに微笑むカカシに頭の奥がじんと震えるような気がした。
「…恥ずかしいヤツ」
「なんでよ。…俺、オビトと一つになれたら、死んでもいい」
カカシの言葉にドキリとする。
その瞳の中に先程、分身から受け取った記憶の破片を見つける。ふと見せるカカシの不安に揺れる瞳。
俺の中でカチリとパズルがハマる。
カカシがずっと求めているのは、俺であって俺ではない、身を艇してカカシを救ったアチラの世界の俺なんだと。
カカシ自身、その事に気付いていないのかもしれない。
「冗談でも死ぬとか言うな」
「本当だよ?」
「…良いから、…もう黙れ」