12
墓参りを終えた二人は、折角だから初詣も、と神社に寄りました。
その帰り道、カカシが買いたいモノがあると言うので商店街を通って帰る事になりました。
街を歩いていると、ショウウィンドウに映った自分達の姿にオビトがつぶやきます。
「なんか…さ、結婚式、みたい…じゃね?」
「そうだねぇ」
満更でもない表情でそう返すカカシを、確信犯かと睨みます。
「なんでお前、白いヤツ着てんだよ。黒にしろよ」
「えー。白のが似合うでしょ」
悪びれもせず、くるりと回って見せるカカシに溜息をつきます。
こんな恰好でうろうろしてたのか、と一人暗くなるオビトを置いて、お目当てのお店を見つけたカカシが脇道に反れます。
(ん?薬局…?)
しかし、三が日中はお休みのところが多く、その薬局も例外では無かったようで直ぐに戻って来ました。
「お休みだった」
「傷薬もう無くなったのか?」
「あ…いや、…ゴムをね、買っとこうかと思って…」
一気に真っ赤になったオビトを見てカカシが笑います。
「あ!」
「なんだよ…」
「…今朝、テンゾウから貰えば良かった」
「バカカシ!恥をしれ!!」
スタスタと歩き始めたオビトを、ちょっと待ってよとカカシが追いかけました。
「だって、必要でしょーが」
「うるさい!」
「お店開くまで我慢だなー。4日かぁ」
「…もうホント、だまれ」
オビトに追いついたカカシがふふっと笑いながら横を歩き始めます。
「あれカカシ先生じゃね?」
ふと、遠くから声がします。
「おーいカカシせんせー!」
ナルトが手を振りながらこちらに向かって来ました。
「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします」
「おめでとう。よろしくな」
変にかしこまった日本語を使うぎこちないナルトも、急に先生ぶってるカカシも何だか可笑しくてオビトはほほ笑みます。
遅れてガヤガヤと人が近づいて来てオビトの笑顔が引っ込みました。
「おう!カカシィ!飲みに行くぞー」
「や、ガイ、俺はいいよ」
既に酔払いのテンションで、こちらの話を聞いていないガイは、カカシの肩を掴み人ごみの中に引きずって行きます。
カカシは不安げにオビトを振り向きましたが、すぐに見えなくなってしまいます。
「オビトも来いよ」
ナルトが声を掛けますが、チラリとみえる集団の中にはオビトを良く思っていない人もいるでしょう。
ぐっと歯を噛みしめると無理に笑ってみせます。
「俺は帰るから、カカシにもそう伝えてくれ」
「…オビト」
「悪いな、…気持ちだけで。ありがとう」
一人歩き始めるオビトの後ろ姿にナルトは昔の自分を重ねます。
オビトが見えなくなるまで見送ると、どうにか早めにカカシを解放する作戦を立て始めます。
「まずは、激眉先生を酒で潰すか…」
誰もいない家に戻り、カカシの用意してくれた袴を汚さないようにとすぐに脱ぎ、元あったように広げ眺めます。
ショウウィンドウに映った自分とカカシを思い出し顔がにやけました。
そして胸がチクリと痛みます。
(カカシには仲間が沢山いる。自分だけのものじゃない)
パタッと畳に横になると瞳を閉じます。
(でも、ナルトだって声を掛けてくれた。…もう一人じゃない。孤独なんかじゃない)
よし!と声に出すと、起き上り昼飯にしようと台所向かいました。
(ついでに晩飯も作ろう。何か残ってたか…)
酔っぱらったカカシをナルトが担いで帰って来たのは夕方の5時を少し回ったくらいでした。
「おい!カカシ先生、重いってばよ!!」
「あー、おびとぉー」
ナルトが手を放すとカカシはべしゃんと玄関口に潰れてしまいます。
「悪いナルト。…しかし随分と早いな」
「いやぁ、もうちょっと早く帰せると思ってたんだけどよ、激眉先生が全然潰れてくれなくて。カカシ先生まで出来上がっちまった」
「…ようだな」
「これ突いた餅。先生と食えよ」
「あぁ、ありがとう」
ナルトはへへっと鼻の頭を擦ると、オビトにお礼言われるの今日2回目だと言い、ぎこちない日本語で、今年もよろしくお願いいたしますと改めて言われました。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
オビトも合わせて深々と頭をさげ、挨拶をかわします。
足元からよろしくお願いいたしますというカカシの声が聞こえ、ナルトとオビトは声を出して笑いました。
涙を拭いながら、じゃぁ帰るわというナルトに、夕飯用に作ったおかずを迷惑かけたお礼にと言って渡しました。