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正直、あんな事する何て知らなかったと腕の中で愚痴るオビトを笑い、頑張ったねとカカシが優しく額にキスをしました。
準備と称して、為れた所業…記憶の片隅にも置きたくないような事をされて、既にへとへとになってしまったオビトを横抱きにして寝室へと移動します。
「お前、何であんなの知ってんの」
「暗部の頃にね…一応勉強したの」
「…誰と?」
オビトの知る限りでは、カカシにそんな様子は無かったはずです。
「ヤダなー座学で、だよ。実践は今日が初めて」
なに、オビト。ヤキモチ?と調子に乗るカカシに少しホッとしながら、うるさいバカカシと小さい声で返しました。
過去に嫉妬するなんて自分も相当参ってると反省します。
「あ、ゴムないや…」
オビトをベッドに寝かせると、クローゼットの中をごそごそしていたカカシが呟きます。
ローションならあったと戦利品のように新品のローションを掲げるカカシにオビトが呆れます。
(使いかけのがあったら、それはそれで業腹ものだ…)
「ま、今日はたぶん入んないから良いよね」
カカシの言葉にオビトの顔が曇ります。
「そんな顔しないの」
オビトのそばに戻ってきたカカシにチュッとキスを落とされます。
「オビトありがとう、ごめんね」
何を謝るのか、と腕をカカシの首に回して、唇を食みもっとと強請りました。
幾度としたキスも、薄目を開けてオビトを見張るカカシの目に鼓動が早くなります。
舌を擦り合うような口付けにオビトの腰がぶるりと震え、添えるように触れたカカシの手が腰に、くるりと身体をうつ伏せにさせられました。
「この方が楽だから…ちょっと我慢してね」
オビトの身体は触れられる期待に竦みました。
いつの間に開けたのか、先ほどのローションをたっぷりと含んだ指が触れました。塗り付けられる動作に身体が勝手に引き攣ります。
準備と称してさんざん弄られたそこは押し付けられると侵入を許してしまいます。
広げるようにして内側にも塗られ、声が漏れました。
「―あっ…ンッンン―」
「痛くない?」
痛くはないけれども圧迫感に言葉を紡ぐ事の出来ないオビトはシーツに頭を擦りつけながら頷きました。
「もうちょっと入れるね」
ぬめりを足しながらゆっくりと、内壁をめくり上げては少しずつ指先を進められ、反射的に締め付けてしまいます。
それがカカシにも伝わっている事がオビトは恥ずかしいと思いました。
ぐちッと音がして、カカシの拳が尻に触れました。その時初めて、中指を含まされていた事を知ります。
臀部を持ち上げられるように押し付けられる拳に、上がってしまう腰を押さえられ、もうこれ以上はないと思っていたところまでも届くカカシの指に翻弄されます。
反動でずり上がる身体をシーツを握りしめて堪えました。
「…はっ…ぁ…くるしっい―」
「力抜いてオビト…」
宥めるように腰に触れるキスも、逆効果でビクビクと収縮するのを止める事ができません。
「ひっあぁっ…んっん―ぁ」
指を抜かれる動きに引き攣れた粘膜を引っかかれオビトは嬌声を上げます。
(なんだ今の…)
考える間もなく、すぐに新しいぬめりを足した指が送り込まれます。
先ほどの出来た道を戻ってきた指にぐるりと一周され、気づくと仰向けになってカカシの方を向いていました。
真っ直ぐに見つめてくるカカシの瞳に羞恥がぶり返します。
顔を見られながらゆっくりと最奥から入口まで指を引き抜かれ、足がぶるぶると震え出しました。思わず漏れる声を堪えてしまいます。
「オビト我慢しないでいいよ…声聞かせて、ね」
覆いかぶさってきた大きな影に縋り付きます。
追って、僅かに開いた隙間に指が戻って来ては、引き抜かれます。
その度に嬌声が大きくなっていくオビトの姿を、カカシがうっそりとした表情で嘗め回すように観察しています。
ずるずると滑るように引き抜きながら、これ好き?と問うカカシ。
「わっかん、ね…ッあ―ぐ…ゆび…な―がい…ながいぃッ」
その言葉に、痴態にカカシの先端からもジワリと熱が滲みます。
ぐっと堪え、指で長かったら、次どうすんのよと息だけで愚痴ると、オビトの身体が反応します。
ヒクンヒクンと指を締め付けられカカシの口角が自然に上がりました。
「…今、想像したでしょ?中がキュンってなった」
言われたくない事を指摘されオビトの顔が羞恥にくしゃりと歪みました。
次いで目尻に玉のように涙が膨れ上がると、ボロリと零れる涙にカカシは慌てて慰めます。
「あーごめんごめん、オビト泣かないで…嬉しくてちょっと調子のった。恥ずかしかったね…ごめん」
うーと唸るオビトを抱き起し、背中を撫でながら痛いところはないか聞きます。
赤くなりながらもジンジンするけど痛くないというオビトの言葉にホッとします。
「ケツばっかりしつこいんだよ。バカカシ」
「だって慣らさないと…、ふふっ、もしかしてこっちも触って欲しかった?」
胸を撫でられ肩が揺れます。
「…ちがっ…ンッ」
既に勃ち上がっていた乳首を指の腹で転がされて、声が上擦ります。
本当に…?と目だけで問われて、思わず顔を背けて反抗します。
「それはッ…寒くて…」
「そう、じゃあ温めないと…」
転がされていた所を指で挟まれるようにして擦られ、痛痒いような感覚に胸を反らせます。
反対側にもカカシの舌が這わされ、オビトの口から甘い息が漏れました。
カカシはちゅうちゅうと子供のように吸い付いてきます。
吸われてさらに赤くなったそこを、食んだまま引っ張られ、愉悦が内側から身体を痺れさせました。
ふるふると頭を振って逃げ切れない波に耐えながら、前回された時もやたらと胸を触られた事を思い出します。
「なぁ、カカシは、胸…すきなの?」
「ふぇ?なんれ?」
「や、おれ胸ないから…さ」
オビトの少ししゅんとした姿に胸を打たれたカカシはバッと身を起こすとオビトを抱きしめました。
急に抱きしめられ、カカシの腕の中でオビトはきょとんとします。
「はぁ―…もう全部食べちゃいたい」
「…?食ってもいいぞ?」
「…バカ」
「お前に言われたくない」
そっと両手に頬を包まれ唇にキスをされます。
「オビト、好きだよ」
ここも、ここもと鼻に、瞳に、額に…、耳にキスするカカシ。
「全部好き」
触れるだけのキスに胸が締め付けられ息が苦しくなります。
「オレも…」
頬に触れているカカシの手に指を絡めて、引き寄せると指先にキスを返しました。
カカシは愛を囁きながら、言葉通りオビトの身体中に唇を這わせました。
その緩やかな行為の中、オビトの耳に時計の音が聞こえてきます。
ゴーン、ゴーン…もう数えられないキスの代わりに時計の音を数えていると予想外に時間がたっていた事を知りました。
(…9回、10回…11回!?)
「おい!カカシ!」
「はい!」
急に起き上ったオビトに名前を呼ばれて、つられて返事をします。
「そば食うぞ」
よたよたと歩き始めるオビトを捕まえて、後でいいよと抱き留めます。
「いや、絶対食う。年越しソバは外せない」
意気込むオビトにカカシがむくれます。
「オレとソバとどっちが大事なの!」
「お前が大事だから食うんだろ、バカカシ。願掛けくらいさせろ」
ぺしっと頭を叩かれて、目から鱗が落ちます。
結局、足に力の入らないオビトを宥めてカカシが台所に立ちました。
(長生きできますように…なんて考えた事無かったな…)
カタカタと揺れる鍋を見つめながら、オビトが想ってくれる事が単純にうれしく勝手に顔が緩みました。
(オレも変わらなきゃ…、オビトの為にも)
「おいカカシー早くしろよー」
オビトの声に返事を返しつつ、止まっていた手を動かします。
「長生きできますように、オレもオビトも」
願いを込めて呟きながらソバを湯の中に落としました。