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窓からの日差しの暑さに目が覚め、ガバリと半身を起す。
(あ…、帰って来たんだった)
任務が休みだった事を思い出しもう一度横になると、カカシが居ない事に気付いた。
(カカシのヤツ夜から任務っつてたな。…なんか変な夢見た気がする)
二度寝をする気にもなれず、起きる事にする。顔を擦りながら居間へと続く廊下を歩き今日はカカシの修業を見てやる事になっていた事を思い出した。
「オビト、おはよ」
「あれ?任務は?」
「何言ってんの、もうお昼過ぎてるよ」
確かに時計を確認すると14時を少し回っている。
「マジかよ。起こせ」
カカシはソファの上で律儀に正座をして、またイチャイチャパラダイスを読んでいたようだった。
「ごはん食べる?」
「いや、今日修業見てやるって約束だったろ。途中で何か買うわ」
着替える為に引き戻そうと踵を返すと、後ろからカカシの笑い声が聞こえる。
「寝ぐせ、大変な事になってる」
触って確認してみると逆立ったてっぺんに対して高等部は絶壁状態だった。
「っひ、シャワー、浴びてきなよ。おにぎりでも握っとくから」
側に寄って来たカカシは腹を押さえて上手く歩けていない。
「…お前笑い過ぎ」
「だって、…ダメ、ははっ!見てらんない」
俺を追い越して台所へと消えるも笑い声だけが聞こえてくる。
本当のカカシは約束に遅れると間違いなく怒る。怒るまでもいかなくとも小言を2、3は言うだろう。
元々こちらの世界のカカシといつかは本当の世界に戻ってしまうであろう13歳のカカシを無意識に比べてしまっている自分に気づき苦笑した。
どんどんと自分の中で大きい存在になっている13歳のカカシが戻った時俺はどうするのだろうか。
どうするも何も、それが自然な事で、アイツにとっても良い事である事は明確だ。
本当のカカシはアイツと入れ替わりにアチラの世界に行っているかもしれない。
『リンって、どうしてるの?』
コチラに来たばかりの頃にカカシが震える声で問いかけてきた事が蘇る。
若くして医療忍術をマスターしたリンは他里との交流で活躍し、今も医療忍術を広める為に走り回っている。
良いヤツを見つけて近いうちに結婚するという噂を聞いたが定かではない。
現役でバリバリだと伝えると、ホッとしたようだったが青白く血の気を失ったカカシの表情が今も鮮明に蘇る。
詳しくは教えてはくれなかったが、アチラの世界ではリンも亡くなっているようだった。
もし、入れ替わりに飛ばされていたとしたら、仲間が居ないアチラの世界でカカシは上手くやれているのか、心配ではあった。
考え事をして頭に血が通ったのか、寝ぐせの€跡が痒くなってくる。頭をガシガシと掻いていると、浴室の扉が開いた。
「あ、起きてる」
「おら、覗くなバカカシ」
「もうおにぎり出来たよ」
「すぐ行く」
まだ顔を出しているカカシにシャワーを向けて蛇口を捻る。
「わっ!早くしてよね」
ガシャンと閉められた扉越しに跳ねた水を払うカカシの姿を見て、今は13歳のカカシに集中しようと決める。
(出来る事からコツコツと、だな)