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透明なぬめりがじんわりと溢れ出す先端をカカシの指先が強く撫で付けたかと思うと、次の瞬間、幹を激しく扱かれて、次第に込み上げる射精感に背中を反らした。
「……ッ!」
白く濁った液体が、シーツとカカシの手を勢いよく濡らした。オビトは肩で息をして、力の抜けた身体を横向きにベッドに預ける。
背中を抱き込むようなカカシの体温があたたかい。
「いっぱい出たねぇ」
そして、鼻を突くのは青い匂い。カカシの掌によって射精させられた事実に、羞恥心が込み上げる。
「もう離せ」
「やーだ」
カカシの腕が濡れたシーツに溜まる池に伸びる。
「今度は俺の番でしょ、…でも、その前に」
そう言うと、ぬめりを纏ったカカシの指がオビトの後腔に触れた。
散々擦り付けられた先走りに既に湿らされていたそこは、カカシの指を呆気なく受け入れる。
「おい、抜けッ」
擦られ過ぎて痺れていた皮膚を骨ばった指に押し撫でられて、チリチリとした痛みが走る。
「ぁ…っく…」
シーツを掴んでずり上がった上半身を引き戻すカカシの腕が頭に回された。
腕枕のようなそれに、強張ったオビトの顎を優しくカカシの指が捕まえる。
「こっち見て」
中を探る指の動きと、オビトの覗き込むような視線に何か言ってやろうと思ったが、口を開くと漏れてしまいそうになる声を噛み殺し、目をそらした。
ぐるりと中を一周して、ゆっくりと引き抜かれる長い指先が、濡れた音を立ててまた埋め込まれる。
くちっ…くちゅ…と湿りを拡げながら、オビトの締め付けを確かめるように繰り返される単調な行為に、薄目を開けてカカシの様子を伺うと、こちらを覗いていた視線とぶつかった。
それを合図に一定の間隔を保っていたカカシの手が速度を速める。
「…もッ、ゆび、抜けッて」
「抜いていいの?」
眉尻を下げたカカシがあっさりと指を引き抜ぬくと、そのまま指の腹で後腔を軽く押さえられ、抜き差しされていたリズムでそこがヒクヒクと収縮している事を自覚させられた。
羞恥に視界が狭まり、カカシと触れている身体を攀じって離れようと試みる。
「ふふっ。きゅんきゅんさせちゃってぇ、入れられるの好きなんだぁ?」
ワザとらしい、いやらしい喋り方に、つい大きな声が出た。
「チガウって言ってんッ」
それを待っていたかのように、ひとつにまとめられた2本の指に突かれて、否定の言葉を発しようとした声は最後まで紡げずに喘ぎとなって部屋に響いた。
「ああっ、…っくぅん、っん」
息と共に吐き出される甘い声にカカシは引き寄せられる。
「ねぇ、オビト…キスしよっか」
腹部への圧迫感から開きっ放しになっているオビトの唇に、顎を撫でる指先を移す。
「すっごいえっちなやつ、…しよ」
「ぁ…?」
独立して動く二本の指に翻弄されて働かない頭ではカカシが何を言ってるのかがすぐには理解出来ず、しかし蕩けそうに熱い目線と溜め息から、彼の異常なほどの興奮を悟る。
カカシはオビトの唇をくすぐるような繊細さでなぞり、その指先を追うようにぬめる舌先を這わせた。
ひび割れた皮膚を癒すようにゆっくりと唾液を零しながら、時折薄い唇に大袈裟な水音を立ててしゃぶりつく。
舌先がオビトの唇をたっぷり時間を掛けて一周すると、二つのそれは唾液に塗れて、オビトは犬にでもマーキングされたような気分になった。
どうでも良い考えがぼうっと浮かぶ辺り、現実感の無いこの状況に脳が戸惑っているのかと思う。
「何考えてんの」
僅かに離れた唇が告げる声に思考を戻すと、後ろを犯す指が入り口近くまで抜かれて、そしてまた奥まで差し込まれる。
「ふ、ぁ…ッ」
カカシは小さくくすりと笑うと、首を傾け鼻先をずらし、オビトの口腔へ舌を差し込んだ。
喘ぎを零す口許は呆気なくその侵入を許す。熱い舌先が歯茎をなぞると、オビトのそれを搦め捕って、互いの舌を貪るように動かされてしまう。
閉じることの出来ない唇から、唾液がつうと流れ落ちた。
(なんだこれ、すげぇ…。)
身体が熱くなって、自然と腰が動く。どこか動物じみた口付けが、オビトの理性を溶かしていく。
「ほら、口大きく開けて、舌を出してごらん」
言われるままに舌を差し出すと、カカシが裏側を下からゆっくりと舐め上げ、そして口に含んでしゃぶりつく。
まるで男性器にそうするかのような舌つきに、出したばかりのオビトのそれは大きく膨らんで、先端を更に濡らした。じゅる、とわざとらしい音を立てて唇が離れ、オビトは瞼を開けてカカシを見上げる。
「いい顔…気持ちよくなってきたねぇ」
はぁ、と熱い溜め息が零される。
「…挿れたい」
ぼそりと呟くと、カカシは指を抜き取った。
「ん…ッ」
「いいよね」
「…らめ」
カカシとのキスで痺れて言うことを聞かない身体でカカシの肩を押しやるも、引き寄せられる力の方が強く逆に手を取られ、先刻よりも距離が縮まってしまう。
ぎゅうっとオビトを後ろから包むように抱きしめてくるカカシは、取った手に指を絡めオビトの指の股を優しく撫でてくる。
気持ち良さの中にも、ゾクリと寒気のようなものを感じてオビトの身体はぶるりと震えた。ふわふわと遠くなったり、近くなったりする意識の中で、カカシの存在だけが確かで大きい。
「なんで?」
湿った息の方が多いであろう声が耳元で囁かれ、鼓膜を震わせた振動が腰まで響いて、ジワリとだらしなく濡らしてしまった。
「やぁ…」
「やだ、じゃなくて。…こうなるの分かってて、着いて来たんでしょ」
咎められるような口ぶりに、そうじゃない、とふるふると首を振って否定した。
「抱き枕で、…良いって言った…」
むくむくと膨れ上がる悲しい気持ちに、顔を傾けたオビトの瞳からは、涙が零れる。カカシはそれを指で掬い取り舐めると、乱暴にオビトの腰を引き寄せ脚で固定した。
「中学生みたいな事言わないの。…まるで、オレが悪い人みたいじゃない」
用意していた使い切り用のローションボトルのキャップを歯に咥えて開ける。つぷんと後腔に潜り込んできた突起にオビトが振り向く。
「な、なに…?」
「オビトのお尻が快くなるおクスリ」
柔らかい容器を潰し、中に入っていた液体を全てオビトへと注ぐ。
「やっ…やだ。変なの入れたら、バレるっ」
「バレるって…これ、付けた人?」
首の後ろをカカシが指差すと、オビトはコクリと頷いた。
「バレないって」
空になった容器が床の上にコトンと音を立てて転がる。
「オビトと俺だけのヒミツ」
太腿の裏側をツーっと辿ってきた指先が尻の肉を外側へと引っ張る。
「それなら、いいでしょ…ね?」
濡れた後腔がヒヤリと外気に晒され、羞恥とはまた別の何かが、オビトの腰を鈍く疼かせた。丸くて熱い先端が後腔を押し拡げてくる。
「…ダメ、ダメ…」
「しーっ、オビト、息吐いてて」
みちみちと身体の内側から音がする。
「くっ…は…ッぁあん」
それは一旦ぬるんと入口の狭い所へ潜ると、ローションの滑りでカカシの腰の動きに合わせてどんどんと深くなる。痛みともつかない圧迫感をオビトの腹部をにもたらした。
「ッ!…やぁぁっッ」
押し寄せる存在の大きさに声を荒げて、抱きとめる腕から逃げようとシーツを蹴り、ベッドのヘリにしがみつく。
小さく舌打ちしたカカシに後ろから両腕ごと、引きずり込まれて、気付くとカカシの上に仰向けの状態で乗せられていた。
「…っ、暴れたら危ないでしょーが」
うなじにかかるカカシの息に肌が総毛立ち、背筋を走った電流は下半身へと甘い痺れを伝わせた。カカシは拘束していない方の腕で、オビトの腰を下へ下へと押す。
「っん!…っん」
たっぷりと湿らされた内部は、その度に圧迫感からジンジンとした熱に変わっていく。カカシの出っ張った所がある一点にぶつかると、熱が堪えきれない声となって口から零れ、オビトの脚の間をも溶かした。
起立した性器は揺れながら白濁を溢れさせて、オビトの腹を濡らしていく。
「あーあ、ベトベト♡いっぱい垂れちゃってるよ」
ついっとカカシの指が性器を伝う白濁を掬い取らながら、上下に滑らされる。
「あっあっ…ひゃぅっん」
擦られる度に、ベッドへ押し付けても、浮かせてもビクリと跳ねてしまう脚を持て余して、膝をこすり合わせ耐えた。
カカシの上でゆらゆらと揺れていると、夢か現実かわからなくなる。浮遊感の中、満たされる快楽に溺れそうになっていると、ぐしゅりと奥まで突き上げられて甘い痛みに現実に引き戻された。
円を描くように回されるカカシの腰に手をついて、身体を反らす。
「う……ッちゃ、…う」
「ん?…なぁに、オビト」
拘束を和らげて、仰け反る肩口に唇を寄せ、ちゅちゅと吸い付いてくるカカシの頭にオビトの手が伸び、髪の毛をぎゅうと掴んだ。
「っは、…抜いて」
「もー、まだ言ってんの…お尻振りながら言っても説得力なーいよ」
腰を掴んでいた手を滑らせ、オビトの上下する胸を宥めるように撫でる。
「オレの、良くない?」
カカシが耳朶の後ろに鼻先を擦り付けながら聞いてくる。
「…やっ、だって、お尻…拡がっちゃっ」
オビトの中でヒクリとカカシが脈打つ。
「っん…あぁっ…またおっきくなっ…ッ」
息を詰めていたカカシが、小さく呻いて、長い息を尽き胸を撫でる手に力を込めてオビトを抱きしめる。シャツ越しでもわかる、熱い手のひらが尖がった胸の先を掠めながら、揉み込んでくる。
「いや、オビトが可愛くていつもより大っきくしちゃってるかもしんないけど、オレの、平均サイズよ?オビトの彼氏ちんちん小さ…って痛い痛い!」
掴んでいた髪を思いっきり引っ張られた。
「彼氏じゃ…なっい…」
「ごめんごめん、お願い、離して」
「それに、指でしか、されたこと…ない…こんなの…知ら、なっ」