Darknessdarkness


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5
快感に翻弄されながら途切れ途切れに漏れる弱々しい告白に、カカシは目を見張る。
「じゃあ初めて…?」
カカシの髪にしがみつく震える手を宥めるようにそっと握り込み、もう片方の手でオビトの腰を掴むと、グン、と激しく突き上げた。
「んぁ…ッ」
「この可愛いお尻に突っ込むの、俺が初めてなんだ…」
低く響く声が鼓膜を揺らして、その反響が神経を伝い、身体の奥に燻る熱を上げる燃料になる。悲鳴というには艶の過ぎる声を無意識に垂れ流して、オビトは訳も分からず、問い掛けに言葉通り必死に頷いた。
「じゃあ、俺が彼氏になろうかな。それでさ、いーっぱいしよ」
ちゅう、と震える肩口に舐めるように口付ける。
「あ…ッ、ぜ、ったぃ、やだ…ぁ」
「なんでよ」
「お前…っ、軟派すぎ、だし…ッ、はぁっ、そもそも、男と付き合う趣味は…ねぇ、ッ」
「へーえ、お尻弄られるような趣味して、よく言うね」
揺れる身体に合わせて、大袈裟に腰を突き上げると、繋がったそこからぬちゅ、といやらしい音と共にぬるくなったローションがとろとろと溢れ出て、カカシの脚の間を濡らした。
「その人とは、ここでも遊んでんの?」
そう言うとオビトのシャツを捲り上げ、つい先ほど優しく愛撫していた胸の突起を、短い爪で引っ掻くように弾く。
「ひぁッ」
「あぁ、可愛い声出しちゃって…」
一定のリズムで腰を揺らしながら、ぷくんと尖った乳首の先端を、今度は限りなく弱い力で摘んで、ぐりぐりと指の腹で刺激する。
「やぁん、そこ、やだぁ…ッ」
「オビトは『やだ』ばっかりだね」
カカシはくす、と笑って、腰を掴んでいたもう片方の手もオビトの胸に這わせた。右を強く抓られたかと思うと、左は小さい乳輪をくすぐるように撫でられる。
両の乳首を同時に刺激されて、オビトは涎を垂らして声を上げた。それでも、首を力なく左右に振り、いやいやを繰り返す。
「ったく…。ね、自分でここ、触ってごらん」
カカシの指が残したむず痒いような感覚を突起を抓り、痛みで塗り替える。
「っふ…ッ」
「そうじゃないでしょ」
固く握られた手をカカシの指が開いていく。
「オレがしたみたいにやって」
ずるりと中から滑り出たカカシが、オビトの身体を持ち上げて身を起こし、腿の上に座るような形で抱き込まる。肩越しにオビトの手の行方を観察し始めた。
「そうっと、優しくね。そうそうじょーず」
腹に回された手が薄い肉の下の腹筋を撫で、飛び散った体液を伸ばす。カカシはその手をペロリと舐め「うっすいなぁ、毎日お尻だけ弄られてんの?」と呟く。
「お前に関係ねぇだろ」
「関係、あるでしょ。今日からオレが彼氏だし?はい、手止めない」
「くっそ、こんなの快くねぇよ」
嘯いて、目を閉じると醒えてきた頭と強いられる自慰に、毎夜繰り返される行為が脳裏を散らついた。カカシといる間だけは忘れる事が出来ていた日常。
強引で良くしゃべるくせに、肝心な事は聞いてこない、そののらりくらりとした態度が、逆に居心地が良かった。
「こうなる事、分かっててついて来たんでしょ」カカシの言葉が蘇る。
(…そうかも知れない)
表向きは組の若頭とされているが、実の所は実子ではないオビトは組長の遠縁で養子として引き取られたが、年老いた組長の慰み者として扱われている。
それは組長であるうちはマダラと数人しか知らされては居ない。それでも必要とされている今の居場所に文句など無かった。マダラとの夜以外は。
「…ッ!」
急に性器を力任せに握られ、オビトは身体を強張らせた。
「また違う事考えてる?オレの事だけ見てって言ったでしょ」
緩められた手が力を失い始めていたそこを扱き始める。
「…ッ、っん」
「彼氏が嫌なら今日だけでいいから、オレの事だけ見てよ。ダメ?」
どう足掻いても、マダラからは逃げる事は出来ない。挑発的にオビトは口角をあげた。
「はっ…、じゃあ、なんも考えられねぇくらいメチャクチャにしてみろよ」
「…いいよ」
オビトの虚勢はカカシの笑みと共に自信たっぷりに返されてしまう。胸の上に溜まっていたシャツを引き抜かれ、首の後ろ側、背骨の浮き出た所を音を立ててキツく吸われる。
「バカッ…痕つけんな…ッ」
「だって、メチャクチャにしていいんでしょ」
胸を弄るオビトの手を押し退けて、カカシの指が触れてくる。自分で同じように触っても何ともなかったそこは、カカシに触られると別の物のように、オビトの肩を大袈裟に震わせた。くすぐる指先に上体を折り曲げて耐える。
「はぁっ…お前に触られると、オレおかしい」
のし掛かかられ、背中に感じる湿った肌の感触に、いつの間にかカカシも着ていたシャツを脱いだ事を知る。
「嬉しいこと言ってくれるじゃない。…オレの事、名前で呼んでくれたらもっと嬉しいんだけど」
腿を撫でながら、膝を伸ばすように軽い力で押されて、うつ伏せになると脇の下から忍びこんで来た手に、また胸を弄られる。
「…は、たけッ」
「ちがーう」
言葉と共に尻の溝を下から上へと擦り付けられた熱い感触に肘をついて背をしならせると、カカシが首から下げていたドッグタグがオビトの背中を音を立てて滑った。
冷たい金属が肌を撫でる感触さえ、オビトをゾクリとさせる。
「ッ、…カカシ?」
ゆっくりとオビトの後腔を拡げながら熱が押し込まれていく。
「いいね、…もっと」
「あ…」
抵抗なく身体に入り込む、ぬるりとした感覚に眩暈がした。そこから全身に熱が広がって、持て余した欲に立てきれない膝を開くと、身体の中の異物感が更に奥を犯す。
ぷくんと立ち上がった胸の突起を捏ねくり回すように愛撫する指先が堪らなくて、その痺れが、消えかけている理性を完全に奪ってしまおうとしていた。
憎らしい程の余裕を浮かべるこの怪し気な男が宣言通りに自分をメチャクチャにするのであれば、それも良いだろう、と快楽の中、ぼんやりと思う。
今はただ、身体を埋め尽くすこの圧力の名前を呼ぶ事しか出来そうになくて、オビトは眉を顰めて、喘ぎの溢れる口を開いた。
「は、ぁ、…カカシ」
「…ねぇ、もっと呼んで」
「カ…カシ、…ふ、ぁ…っ、カカシ、カカシ…ッ」
はぁ、とカカシがぬるい息を吐いて、同時に腰を大きく打ち付けられる。
「んあぁッ!」
「オビトの声、すごいエロくて、さいこう…。名前呼ばれるだけでイッちゃいそうよ」
わざとらしく耳元にぬるい吐息を吹きかけながら、出口ぎりぎりまで引いたかと思うと、カカシの左手がオビトの腰を掴んで、ぐい、と勢いをつけ最奥まで貫く。
深くなる挿入に息が止まって、しかし再び出て行こうとする熱を離したくなくて、身体が勝手に腰を動かした。
「もう、そんな締めないで」
出ちゃうよ、と悩ましく零しながら、カカシの掌が、汗の浮かぶオビトの臀部を撫で回す。伸びをする猫のような体勢に、背中の龍が震える。
うつ伏せのまま腰だけを高く持ち上げられ、突かれる度に大きく揺れてしまうオビトの先端がじんわりと滲んだ。
「あッ、あん、カカシぃ…ッ」
「あぁ、気持ちいいねぇ」
じっとりと円を描くように腰を擦り付け、右の親指と人差し指でオビトの右乳首をやわらかく抓るように刺激しながら、左手がオビトの脚の付け根に伸びる。
びくん、と跳ねるそれが握り込む掌に溶かされてしまいそうで、先端部や裏側をいやらしく撫でる繊細な指先に、とろとろとぬめりが溢れた。
「ねぇ、おっぱいとおちんちん、どっちを弄らるのが好き?」
後ろを満たされ、胸と性器を同時に愛撫されて、オビトは身を捩って声を上げた。
「ねぇってば」
「…ッ、どっちもっ、どっちもして…ッ」
「ふーん。どっちも、ねぇ。……オビトのエッチ♡」
きゅっと同時に指で締め付けられて、カカシの下でオビトの身体が波打ち、溢れたぬめりが指を滑らせる。 濡れそぼった音と、激しく上下する手に、熱くなる一方の身体が現実を擦り切れさせていく。
「いっぱいしてあげるから、オビトも動いて…もっとお尻振って」
急かすように小刻みに揺すぶられて、逃げてしまう腰が否応無く左右に揺れた。
「カ、カシ…ッ」
カカシの動き続ける手に指を伸ばすが、抑制の意味をなさず前のめりに倒れてしまう身体を支え直す。
「はっ…、も、…溶ける、っんぁ」
腰を大袈裟に震わせるオビトを引き寄せると、カカシは身体を繋げたまま身を起こす。 体重の重さで深くなった挿入に串刺しにされ、オビトは苦しさのあまりカカシの腿に足を乗せて一点に掛かる体重を分散させた。
開いた脚の間でどろどろになった性器をカカシが見せつけるように擦り上げる。
「ひっ…、っあ…あ」
「大丈夫。オビトのおちんちん溶けてないよ。ふふ。ガチガチ」
視界からの刺激に耐えられず顔を背けると、覗き込んでいたカカシに唇とも頬ともつかない位置をべろりと舐められて逃げ場を失った。 視界の端で自分の腰がいやらしく動いて、カカシを喜ばせている。
「ほら、見て…気持ち良くなってるトコ」
ちゅっちゅっと短く口付けてくるカカシの視線は、オビトを愛でる指先に注がれている。見られていると事実に身体の内側がギュウっと締め付けられている感覚がして、肢体が勝手に震えはじめた。
掴んだ腕に爪を立てると、乳輪ごと敏感になった乳首を引っ張られて、堪えられずにカカシの胸に背を押し付けて仰け反り嬌声をあげる。
「限界?…もうちょっと付き合って」
「ふぁ、はっ、あ…む」
喘ぎごとカカシの唇に吸い込まれ、もう少しというところの根元を強めに握られたまま、崩れるように向かい合わせにベットへ押し倒される。
「…カカ…シ、っん、イきたい…」
脚でシーツを掻きながら、拘束する腕を忙しなくさする。
「うん。顔、見せて」
カカシが手を緩めると、解放された性器に血液が巡りヒクリと脈を打って跳ねた。バタつくオビトの脚を抱えてカカシが押しかかってくる。
折り畳まれた身体に叩きつけるように腰を打ち付けられ、呆気なく限界を迎えた身体は押し上げられるままに白濁を吐き出してしまう。
「オビト…目開けて」
揺れる視界でカカシをとらえると、熱を宿して妖しく光る瞳に射抜かれた。顔を見せろというカカシの言葉の意味に、思考が追い付いて腕で顔を覆う。
「…見る…なっ…!」
「あーん、隠しちゃダァメ♡」
オビトの腕を押し退けた手が零れた唾液で濡れる唇と咥内を行き来して撫で回す。
「可愛い顔みせて。これも彼氏の特権…でしょ?」
鼻がぶつかる程の至近距離で、見つめてくるカカシが舌なめずりする。その獣のような獰猛な表情に、まだ濡れ続けている性器がジクリと疼き、内圧が上がっていく。
「ん…、オビトの中、すごい、よ。ギュウって。…はぁ、きもちいー…」
「あっ、ダメ…だっ、カカシ、うご…くなっ」 ゆるゆると律動を再開し始めたカカシは、オビトの髪を撫でて優しく頭を抑え付けると、首筋を辿った鼻先で耳の裏を擽る。
そこでオビトの匂いを深く吸い込み、震える吐息を吐いて抱えていた脚をさらに高く抱えなおした。
「痛くしたらごめんね。…ちょっと、もう加減出来そうにない」
ふざけた口調の時とは違う低い声で、そう告げるとズシリと深く押し入って来た熱が暴走しはじめた。