3
(どうしてこうなった)
浴室の天井を見上げながら、湯船のヘリに腕を投げ出してオビトは自問自答する。
カカシが動く度に揺れる湯に揺蕩う。湯の中で重さを感じないとはいえ、危ういところに触れる肌にたじろぎ身体の位置を調整する。
「ちょっとオビト、動いたら危ないでしょ」
顎をなぞっていた剃刀を離し文句を言う。
「お前ちょっと離れろ」
「それじゃ剃れない」
俺の言葉を無視してカカシに剃刀を持っていない方の手で顎を持ち上げられた。
(マズイ)
にじり寄ってきたカカシの内腿に己の性器がぶつかる。
「あ、」
「…なんで勃ってんの」
顔を天井に向けたまま、どうにでもなれと瞳を瞑って長く息を吐き出す。
「なんでだろ。疲れてんのかな」
「ふぅん」
わかってかわからいでか、性器に柔らかい尻を乗せて身体を固定すると、黙々と剃刀を走らせ始めたカカシ。
俺はこれ以上欲望が暴走しないよう印を数えて耐える事にする。水遁系の例の超長いやつ。
丑、申、うっ、動くなカカシ、子、亥、酉、丑、午、酉、子、…あーなんだっけ、…寅?…ダメだ集中できねぇ。
早くも挫折しかけた時、丁度カカシが身体を浮かせた。
「終わった?」
「ん」
顎を撫でてみる。先ほどまでの髭の感触は無くなり、慣れ親しんだ皮膚の感触を取り戻していた。
腕を伸ばして剃刀を戻しているカカシに近づく。真白い肌は上気して薄らと色づいている。浮き出た背骨に指を這わせるとヒクリと肩が揺れた。
「もう、ちゅーしても良い?」
振り向いたカカシは両腕を湯船の中に入れて黙ってしまう。
「だめ?」
駄目じゃない事は顔を見れば分かる。分かるけれども、下げられた眉尻をみるとさらに困らせたくなる。
鎮座してしまったカカシを引き寄せ胸元をなぞる。
肉が薄く、筋肉の付ききっていない胸元は柔らかく、指が少しだけ埋もれる。
「な、なに?」
「ん?警備隊長なう」
「なにそれ」
「いや、こっちの話」
少しだけ首を傾げた隙を狙って、薄い唇を舐める。
「っ!まだ…良いって言ってない…よ」
「嫌だった?」
「いやじゃないけ…どっ…ん」
久しぶりの柔らかい舌の感触に、カカシの鼻にかかった声に欲情する。カカシとこういう事をするようになるなんてコイツが来た時には思いもしなかった。
この瞳のせいだろうか。左頬に奔る傷を舐め上げると薄らと開いた瞼の隙間から写輪眼が覗く。
コチラの世界のカカシは俺を庇って出来た傷のせいで左目が見える状態では無かった。
あの時「俺がお前の眼になる」とは言ったものの、アチラの13歳の俺は写輪眼ごとカカシに譲ったという。
不思議な感じだった。カカシを自分のもののように感じる。指を滑らせると白い肌の上で唯一赤い胸の突起が硬く尖っている。
温かい湯の中でさえ俺に触れられると、震えるカカシに愛おしさが募る。
「ふっ…ん、はっ、オビト」
「ん?」
「おっぱい、やだ…ビクビクすっる」
「前はビクビクしなかったのに、なんでだろうな」
態とカカシから見えるように突起を摘まんでやる。
「分…かんな…いっ…も、やめ…」
視界からの刺激に耐えられないのだろうカカシが首にしがみ付いてくる。その仕草が喜ばせるとも知らずに。
「体つき確かめてるだけだろ」
俺の言葉に触られることを良しとしたのか、抵抗らしい抵抗もせずカカシは耳元で声を殺して喘ぐ。
色づいた首筋を舐って吸い上げて、自分の所有物かのように白い肌に赤く跡を残す。
「ね、オビト。んっ…あっした、お休み?」
「あぁ」
「火遁の修行…みて、くれる?」
綱手様の好意で暗部に返り咲いたカカシは、任務とたまに本当のカカシの部屋に空気を入れ替えに行く位しか外出しない。
明日は長期任務明けで休みを貰っていた。本当は寝ていたい所だけど、たまには外でカカシに付き合うのもいいだろう。
「いいぜ」
「本当!?」
顔を上げたカカシの年相応の表情に、実年齢を思い出し手が止まった。
「あぁ、…もう上がれよ。のぼせるぞ」
「…オビトは?」
「頭洗ってから出る」
納得いかない表情のままのままのカカシを押して湯船から出す。
(ほんと、ちぃっせーなぁ…)
湯船のへりに頭をのせて湯をはじく桃色の尻を見つめていると、顔だけ振り向いたカカシと目が合う。
何の感情も感じさせない表情で、何事も無かったかのようにカカシが口を開いた。
「オビト、…オナニーするの?」
無意識に片眉が上がったのが自分で分かった。
「しません」
グッと表情を作らないように力を込めて顔を背け、手の平を返して早く行けと手を振る。
「…するんだ」
「しねぇーって言ってんだろ!」
とは、言ったもののしっかりと起立している所為で一緒に出る事が憚れただけだった。
カカシが脱衣所から出た事を確認すると、言った通り頭を洗うべく湯船から出る。
(疲れてるってのにギンギンですねーオビトさん。萎えてくれませんか?)
股間で揺れる分身に語り掛け溜息を吐きつつ、どうしたものかと首を捻るとゴキリと骨が鳴った。
(こういう時はアレだカカシをカカシ変換で…。)
先ほど見たカカシの裸体を頭の中に用意し、徐々に成長させていく。
(そうそうモッサイ大男へ。アレ…?意外とイケる?)
「どわっっ!!」
妄想を進めつつ捻ったシャワーから勢いよく冷水を浴びてしまった。
(なにやってんだろ、俺……)