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カカシからの申し出が通り、無事オビトは任務につく事が許されました。
正規部隊への配属は叶いませんでしたが、暗部での勤務が与えられたのです。主な任務内容は夜間の里警備です。
夕飯の支度を済ませ終わると夕方の5時を少し回った位でした。オビトの出勤までまだ少し時間がありましたが、まだカカシは任務から帰って来ていません。
オビトが任務に出るようになってから同じ家に居るというのに、直接顔を合わせる時間が極端に減っていました。
もう、二週間はまともに会話をしていない事に気づきます。
自分の分の夕飯を手早く片付け、カカシへの置き手紙をしたためました。
『バカカシへ 夕飯は冷蔵庫に入れとく。秋刀魚』
(明日はお互い休みの予定だったよな…)
オビトは冷蔵庫の横に掛けてあるカレンダーの丸印を確認し、出勤準備に取り掛かります。
誰も居ない家の中に行って来ますと言って出掛けてから数時間後、任務からカカシが帰って来ました。
明かりのついて居ない家を見て、いつもの猫背をさらに丸めながら玄関をくぐります。台所でオビトの書いた置き手紙を見つけ、自分の心の小ささに嫌気が指しました。
(最初は一緒に暮らせると言うだけで喜んでいたのにね…)
冷蔵庫の中の用意された秋刀魚を見ると、カカシのお腹がくぅと啼きました。
(哀しんでいてもお腹は減るのね…)
「泣きたいのはこっちだよ。バカカシ」
オビトの口調を真似ながら、自分のお腹を摩り、遅い夕飯の準備をします。
オビトが居ない夕食は大好きな秋刀魚も味気なく感じました。
すっかり朝日が登りきった頃オビトは、カカシに出迎えられ帰宅しました。聞けばカカシは一睡もせずに待っていたとの事。
「寝ようと思ったんだけど、何だか目が冴えちゃって」
「すまん。遅くなった」
オビト旦那さんみたいと言って笑うカカシにただいまのキスをします。
「ご飯食べるなら作ろっか?」
「いや、カカシ今日休みだろ…一緒に買い物行かないか。飯は外で食おう」
日常品の類いの買い出しなど任務に出るようになってから疎かになっています。
少しの間の後にそうだね、行こうと言ったカカシの顔が少し翳っていました。
お互い久しぶりのふたりだけの時間です。カカシの云わんとしている事はオビトにも分かっていました。
(オレだって…)
カカシが暴走してしまったあの日以来、キスも触れるだけのものしかしていません。
もうお店空いてるかなと言いながら居間に向かって歩くカカシの手を取り、手前にある自分の部屋へと誘いました。
「カカシ、ちょっと来い」
部屋に入るなりカカシをベッドに座らせ、自分はカカシの膝に乗り上げ首に腕を絡ませます。
まるで誘ってる女のようだと心の中で自嘲しますが、久しぶりのカカシの温もりにそんな事はどうでも良くなってしまいます。
耳に鼻を擦り付けるようにしてカカシの名を呼びます。
「…どうしたの」
ぽんぽんと背中をあやすように叩かれ、温もりがジワリとオビトの身体を満たしていきます。
カカシの肩に頭を乗せたまま表情を伺いますが、カカシは優しく微笑んでいるだけでそれ以上の事はしてこようとしません。
眼を瞑るとカカシの熱く潤んだ瞳を思い出します。
あの日射精こそしなかったもののカカシの手によって幾度も昇りつめた身体は、ふとした瞬間にその記憶を呼び起こしオビトを悩ませました。
カカシの手を取り、暗部用に支給されているピッタリとしたアンダーの中へと誘い込みます。
ズキズキと痛む程に高鳴っていた胸がカカシの手の温もりで和らいだような気がして、ほぅっと吐息が漏れました。
戸惑いながらオビト名前を呼ぶカカシを潤んだ瞳が見上げます。